居合い 漫画家です、と彼は言った。 九時に業者が来ます、と元就は言った。 「失礼した」 「いやいやいや、ここまで見たからには手伝ってくれんだろ」 「見た詫びにティラミスをやる」 「水漏れだし」 「マンゴープリンで」 なかよしだかりぼんだかちゃおだか知らないが、こんな徹夜をして無精髭を生やした眼鏡のムキムキが漫画を描いているなんて、少女の代わりに元就が泣いてやりたい。 というか、泣きたい。 「締め切りに間に合わねえんだよ!頼むよ!」 いつの間にか二人でティラミスとマンゴープリンを食べ、元就は自分のノートパソコンを持ってきて、この週末を階下で過ごした。 水漏れの原因はやはり洗濯機だった。 そして無事仕上がったデータを送り、二日間寝ていない体でティラミスとマンゴープリンを買いに行った。 「いらっしゃいませ…えええ」 |