現代 | ナノ

気合い


鍵はそのまま開いていたので、サンダルを脱ぎ捨て甘い海に入る。

「失礼する」
「え、ちょ、締め切りまだっすよね?大丈夫っすよね?びびらせないでくださ…」

机に向かったまま顔だけ懇願で、元就に何か訳の分からないことを必死に言う大男を、滑稽と呼ばずしてなんと呼んだらいいか、元就には判断がつかなかった。

「…ってオイ、お前か!」

パソコンを開いているのに、手に持っているのはマウスではなくペンだ。
画面にはかわいい女の子のイラストが、目と口を塗る前の状態で光っている。
どういうことか。

「何だ、それは」
「ああん?絵だよ絵、じゃなくて、何で入って来たんだよ!」

壁には「せんせいがんばってください」と汚い字で書かれた紙が貼られ、よく分からない手作りのマスコットがパソコンの周りを埋め尽くし、ショートケーキのキャンドルが甘い匂いを撒き散らすこの部屋で、一体何が起きている。