現代 | ナノ

応援


私も市が好きだ!とどうしてすぐに言ってあげられなかったのだろう。
水曜5限は織田助教授の漢文学。
隣に座るのはいけない気がして、何となく席を離してしまう。

「貴様、返事はしたか」
「なっ何っ、き、聞いていたのか!」
「我がいるところで告白をしたのがそちらだろうに」

いつもは隣になんて座らないくせに、こういう時に限って座ってくる同学を、長政は恨みがましく見つめる。

「していない」
「さっさとしろ」

さっさとしたいのは山々である。
しかし妹思いの兄が、6時の講義終了後に妹を離すはずがない。
そのまま帰宅である。

「奪ってしまえ」

何てことないように元就は言った。
講義はまるで耳に入らなかったが、元就が応援しているかと思うと何やら百人力な気がしてきた。