卑怯 文学部には女子が多いのではなかったのか。 いつもの研究室に入り、むさ苦しい男臭さに耐えなければならないのはおかしい。 「何かあったか」 「愛の告白だ」 「ああ、月が綺麗ですな」 「長政くんが?」 「いや」 「えっ、じゃあお市ちゃんの方から?やるなあ、なあ、かすが」 「私に振るな」 「なー佐助」 「ははは、慶ちゃん、殴るよ」 「いてっ、言う前に殴るなんて卑怯、卑怯!」 ワイワイガヤガヤ、先程の静謐な印象の市とは違って、何だか安心する、ようなしないような。 次の講義があるのか、根ほり葉ほり聞くのを押さえた口がこちらを向く。 「告白の返事、楽しみにしてるから!」 ニカッといい笑顔で肩を叩かれた。 やはり日文へ行かなくてよかった。 |