豪傑 漢字がずらずらと並ぶのが格好良い、と書道を習い始めの頃に思った。 登場人物の豪傑さが気に入った、と話を読むたびに感じた。 「長政様はいっぱいあるのね」 いざ二年になり、中文に入って、前にも増して市と隣で講義を受け、中国語にどっぷり浸かると、何が何だか分からなくなる。 果たして中国語が好きなのか漢字が好きなのか、何が好きなのか。 とりあえず口に出しておかねば気が済まない。 「市はないのか」 「市は、…お兄様が…」 「それ以外で、中文が好きな理由だ」 ひっそり眉を寄せ、市は俯いた。 まるで長政がいじめているみたいではないか。 豪傑はそのようなことはしない、のに。 「次の講義が終わるまでの課題だ!」 |