現代 | ナノ

出身


兄がここの中文出身だからこの大学に来たの、と入学式でたまたま隣の席に座った女性が言った。
文学部全体で果たして中文を選ぶ人が自分以外にいるだろうかと不安になっていたものだから、長政はそれはそれはそれはそれは喜んだ。
喜んで早急にメールアドレスを交換した。
携帯に赤外線がついていなかったのを今でも覚えている。

「おかしなものだな」
「何が?」
「市とこうして研究室で二人、飯を食べているというのが」
「…嫌、なの?」
「ちっ、違う!断じて!それはない!」

ガタン、と立ち上がり、座る。
中国でよく見る「喜」を二つ重ねた文字が目に入った。