現代 | ナノ

真面目


「ところで慶次くん、さっきのメーリスの話だけど」

真面目にノートを取りながら、いかにも前の元親の頭が邪魔で見えませんよ、とでも言いたげに慶次側に頭をずらし、大真面目に半兵衛は小さな声で言った。
それがあまりにも見事なものだから、泳ぎだした夢のプールからハッと現実に押し戻される。

「もうないのかい」
「ない。一切合切やつらの胃袋の中だ。思い出すだけでイライラする」
「それは君、糖分が足りていないからだ。僕もね」

半兵衛はおもむろに消しゴムを千切り、元親に投げつけた。
多分美しく寝こけているのだろう、反応がない、ただの屍のようだ。