現代 | ナノ

大声


「市!そこにいたか!」
「なが、まさ、さま…」
「心配したぞ!」

夕日の差す教室の、壁際一番後ろの指定席。
購買へ走りやすいから、真田がよく羨ましがっている席。

「…市だって…心配したもの。長政様、市のこと、嫌いでしょう?無理に話しかけないで、いいから…」
「誰が市を嫌いになるものか!」

教室と廊下いっぱいに広がる声。
もしかしたら職員室まで届いているかもしれない。

「嫌い、じゃないの…?だったら何で…」
「市のことが、好きで好きで、このままでは心臓が爆発しそうだからだ!」

届いているなら、是非聞いてほしい。
提出したノートの美しさとか、汚さとか、市が持ったノートの重さとか、不甲斐ない自分とか、全てを。

「私はっ、市が好きだ!」