落下 「このノートは何だ」 生物、と書かれたノートを不思議そうに見つめる長政は、とうとう文字でも読めなくなってしまったのかと思った。 「生物の課題だよ」 「そのようなもの、あったか」 「長政、ノート提出してないだろ。珍しく聞いてなかったんだな」 思いつめるあまり、課題の提出を忘れるとはどれほどか。 濃姫も昔、信長を目で追うあまり、階段から落ちたことがある。 「そう、だから、俺はぼんやり長政の代わりにお市ちゃんと集めたノートを出しに来た、そしたら長政と先生が話していた、それだけだよ」 長政が慌てて鞄からノートを出し、一番上に乗せる。 皆のよれよれになったノートの上に、長政のだけが美しい。 どうやら一度、長政は落ちた方が良いみたいだ。 |