現代 | ナノ

物忘れ休憩


また、チャイム。
付き添ってばかりもいられないので、彼らは教室に戻っていった。
テストも近いから、ノートを取ってもらわなくては困る。

「さっきまで死ぬ死なないだったのに、テスト、ね…」
「笑えますね」

くすくす、カーテンの向こうから、幸の薄い空気。

「明智先生」
「君のたんこぶは死をもたらすということですね」
「学生のテストは死活問題、ってことです」

そういえば、そうだった。
保健室には魔物がいる。

「たかがテストが死活問題ですか。大きく出ましたね」
「そうなんですって」

馬鹿にしたように笑い続ける魔物に、言い訳のようなことしか言えない。
悟られるのが怖いのか、何が怖いのか。
シーツをしわだらけになるほど強く寄せると、くすくすは止み、静かな保健室が少しの間手に入った。

「知らぬは幸か不幸か」

私には関係ないのです、どうでもいいのです、と彼は言った。