現代 | ナノ

罪無し宣告


記憶はある、どちらの記憶も。
うっかり死んでしまったあっちの記憶も、うっかり階段からずっこけてしまったこっちの記憶も。
リンクする関係図に少し時代の修復を加えた世界は、ぬるま湯のようにねっとりとしている。

「佐助くん、今日は無理をしない方がいい。後でノート貸すよ」

アンタは敵だった。

「自業自得だな」

アンタは今も彼しか見えていない。

「いやー本当良かった良かった」

アンタの脳天気は変わらない。

「マジSorry、いてっ、止めろ真田!」

アンタは俺を殺した。

「佐助、何か言ってやれ、この愚か者に」

また、まっすぐな目。
応えられないのは、いつでも同じ。

「竜の旦那、俺様、一生アンタを恨むよ」

消えた笑顔も、自分の名前を呼ぶあまりに枯れた声も、それでも眩しく竜を見る瞳も。
すべて、すべて。

「嘘だって、許す許す!無罪放免!」

互いにに向けられる笑顔が羨ましくて仕方がなかった。
仕方ないんだ。