先走り電子 大失敗、大失敗。 あの電撃、避けきれると思ったんだけどなあ。 「佐助、佐助!」 そんなに名前を呼ばないでよね、恥ずかしい。 もう目を閉じていいかな、赤い涙もこれでおしまい。 楽しかったよ、旦那、なんて、未練たらたらだ、はは。 「佐助!」 「猿っ!」 「佐助くん!」 間抜けながら、走馬灯に音声があるのかと思った。 さっきまでの夕空は、明るさをそのままに白い壁へ。 砂っぽい固い地面は、埃っぽい布団。 旦那の、慶ちゃんの声。 かすがの、竜の旦那の声。 それから、半兵衛の声。 おいおい、敵に情けをかけられるなんて。 「心配したぞ!」 握った手に、まめはなし。 心配をする額に、鉢巻きはなし。 羽がなく、谷間を見せず、眼帯も、仮面もない。 白と黒の世界は、きっと。 ほら、チャイムが鳴った。 |