現代 | ナノ

私と甘い歌を聴きませんか


包み紙が、一つ、また一つ。
殺風景だった机が大分賑やかになった。

「たっぷり叱っておくわ。あの子たち、保健室を何だと思っているのかしら」
「鬼の立ち寄るところですよ」
「あら、お上手」

鬼ごっこと称して遊びに来るのが彼ららしい。
どこまで予想しての行動かは知らないし、もしかしたら何も考えていないかもしれないけれど、それでも。

「あんまり叱ってあげないでください」
「どうして?」
「帰蝶が来てくれましたから、私は幸せです」

電池が切れて音が聞けないのを知りながら、イヤホンを耳につける。
ひんやりと心地好いのは秋の風。
きっと帰蝶は何かを言った。
音楽を聴いているふりをして、無視をした。