現代 | ナノ

私と秋の色を塗りませんか


「私の生徒が迷惑をかけたみたいね」
「いえ、賑やかでしたよ」

帰蝶はギシギシの丸いパイプ椅子に腰を下ろし、茶菓子をいくつか置いた。
お詫びのつもりらしい。

「どうしてあんなに馬鹿なことができるのかしら、感心するわ」
「おや、若さを捨てた発言ですね」
「さすがにあれは無理よ」
「まあ、確かに」

賑やかな茶菓子の包み紙を一つ開き、口に含む。
賑やかな味だとか、賑やかな色だとか、すべて目の前の帰蝶には適わない。
春の桜も、夏のひまわりも、秋の紅葉も、冬の六花も。
保健室の白ささえ、霞んで。