現代 | ナノ

チョウリ


慶次は笹かまぼこ派だったらしい。
たわわに実る林檎の前には、少女しかいなかった。

「おめさん、迷子か?」
「いや、迷子を探しに来たのだが」
「ミイラ取りがミイラになっちまったんだな」
「だが、林檎取りは林檎にはなるまい」
「んだな」

秀吉は腕を伸ばし、少女の代わりに林檎を収穫した。
昼になればおいしい米が出てくるし、デザートに林檎が食べ放題だ。
身長が高く若い秀吉は近くの農家から引っ張りだこで、毎日たくさんの農場へ行っては野菜や果物を取り、少し分けてもらっては少女のために調理した。

ある日、めくられたカレンダーを見て、ふと我に返った。

「行くだか?」
「ウム、やらねばならぬことがあるからな」
「せめて、おらたちの野菜を持って行ってけれ」
「…ありがとう」

秀吉は日に焼けた肌をくしゃくしゃにして、東京行きの新幹線に乗った。