現代 | ナノ

カンシャ


「かすがくん、お土産」
「ありがとう、謙信様といただく」
「慶次はいるか」
「昨日まではいたが、どこかへ行ってしまった」

一歩遅かったようだ。
半兵衛のお土産を処理したせいで出発が翌日になったから、それがなければ間に合ったかもしれない。
いや、別に構わないが。

「慶次、どこへ行ったのだ…」
「そんなことより、かすがくん、日本酒の具合はどうだい?」
「ああ、上々だ」

色々考えている内に、二人は蔵へ入っていってしまった。

分かってはいたが、ここからは秀吉の一人旅である。
半兵衛は慶次を口実に新潟まで酒を呑みに来た、つまりはそういうことである。
やっと退院して、やっと好きなだけ酒が呑めるようになったのだ。
医者の目の届かないところで無茶をしたい気持ちも分からないでもない。

「けいじどのでしたら、さらにきたへむかいましたよ」
「…感謝する」

目指すは宮城か青森か。
秀吉は笹かまぼこより林檎が好きだから、青森に決めた。