デンシャ 「まさか本当に新潟へ行ったんじゃないだろうね」 いくらかけても繋がらない携帯を睨み、半兵衛はため息をつく。 本当は今日は、秀吉と甲子園に行くはずだった。 甲子園ジュースを飲んだり応援したり、慶次もいる予定だった。 なのに今、冷房の効いた車両に揺られている。 快適だ。 「まさか、ね」 「慶次のことだ、ふらっと帰ってくる」 「それは分かっているんだけどさ」 新潟へ行くなら連れて行ってくれてもいいではないか。 甲子園が新潟に変わるくらいなんてことない、秀吉だってそう思っているはずである。 「つまりは甲子園ジュースか日本酒か、だよ」 半兵衛はよく分からないことを言い出した。 天秤にかけたら間違いなく甲子園ジュースが地に着く秀吉にとって、コップ一杯も呑めない秀吉にとって、向かいたいのは東ではなく西である。 電車はどんどん甲子園から離れていく。 |