現代 | ナノ
振り
長政はすべて忘れてしまった。
市はすべて覚えているのに、長政はすべて忘れてしまった。
「どうして様をつける。我々は同級生ではないか」
「ごめんなさい…つい、癖で」
「どんな癖だ」
不満そうながらも、長政は市の手を離さない。
市は手に力を入れ、人混みで離れないよう長政の後をついていく。
長政様、と呼んだ。
振り向く顔は、浅井家当主の顔ではなかった。
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