現代 | ナノ

暑さ


昨日までの記憶の上に、突然いつかの記憶が乱入してきた。
それでも慶次は電車に揺られている。

「今日は暑いな」
「暖房がよく効いているんだよ、降りたくないね」

ガタン、ゴトン、と揺れる度に、少しずつ記憶が増えていく。
あと二駅、記憶は悪い方に進んでいく。

「俺は早く降りたいよ、暑すぎる」

あと一駅、もう止めてくれ。
電車を降りたらきっと、すべてを忘れられる。
慶次は目を瞑り、冷や汗を拭った。