小説読みの恋 本当はぼんやりと覚えていた。 かすがに告白しようしようと意気込んでドキドキしていつもより大分飲み過ぎてしまったこと。 それでも告白という偉業を成し遂げなくてはならないと思ったこと。 それなのに恥ずかしくて気持ち悪くて帰るギリギリになってようやく決心がついたこと。 「月が綺麗ですね」 慶ちゃんや旦那に比べて、かすがはあまり近現代文学に興味がなく、上杉助教授の下で日夜古文と格闘している。 それが救いなのか、またしばらくチャンスを失うきっかけとなったのかは分からない。 かすがの金色の髪が、太陽を眩しく反射している。 本当に、月のようだった。 |