綺麗好きの夜 思っていたのと全然違う反応に驚かざるを得ない。 「佐助か。どうした?」 全く何もないような顔で、普通にドアを開けて、慶ちゃんに見た瞬間閉めたりするようなこともなく、別に何もなく。 おかしい、推論は外れたのか。 「あー、昨日ご迷惑をお掛けしたかと思って」 「ああ、私は別に火の粉は降りかからなかったが…真田には詫びたか」 「今度ケーキ持って行こうと思ってる」 「そうか」 あんなに身構えたのに、こんなに何もないと少々困ってしまう。 ドキドキの行き所がないというか、何というか。 「…本当に何もしてないよね?」 「まあ、多少やかましかった程度だな」 ふと思い出したように、かすがは上を見る。 夜中にやかましいなんて人間失格だが、まあ学生のアパートくらいしかないから許してほしい。 「私の手を掴んで叫んでいた」 「えっ、何て」 「確か…月が綺麗だとか」 |