戦国 | ナノ

日暮三角


そんなに竜が好きならば、空へ昇っていけばいい。
しかし虎には羽はなく、いたずらに牙を輝かせることしかできない。

「それで、旦那はどうするの?」

つやつやと磨かれた牙を空に向けても、気紛れな竜は見向きもしない。
早く昇ってこい、と突き抜けた雲の向こうから三角の瞳を覗かせるばかりだ。

「某は、佐助に頼む」
「そこで人任せにしちゃうの、旦那の悪いところだよ」

空への道を作るのを、邪な烏に任せていいものか。
天と地を見ることのできる佐助には、竜の瞳も虎の牙も、眩しすぎて直視することができない。