風魔失態 「風魔、やっと来たか」 ご老体は縁側で一人、果物をつまんでいた。 小太郎の切りかけの、甘い果物。 いつの間に運ばれたか、全く覚えがない。 「風魔、小隊長より聞いたぞ、手を切ったそうじゃな」 小隊長はその果物を嫌いだと言った。 それなのに、ご老体は怒りながらひたすらに食べている。 「そろそろ戦が始まる」 最後の一かけを喉に押し込み、寂しそうに明るい太陽を見上げ、ご老体は小さな背中をさらに小さくさせた。 「風魔、手には気をつけるのじゃよ」 包帯から滲む血を、その三日後には他人の血で染める。 小太郎は穏やかな日々を思いだし、一度、頷いた。 |