果物失業 全幅の信頼が怖い。 いつ裏切るか分からない男に茶を頼み、囲碁将棋を強要し、しまいには果物を切れと言う。 「…いえ、血迷いごとでした」 手が離れても、小太郎は何もできない。 あのご老体の好きな果物が分からない。 風魔小太郎が伝説なのは、見られた人間を一人残らず消してしまうから。 先代が最後に教えてくれたことが、思考を遮る。 「……」 「是非、そうならないことを祈っております」 小太郎はいつか、北条軍すら無きものに変えてしまうのだろうか。 しばらくそのままで、いつか、遠くでご老体が呼び出すまで、そのままで。 |