戦国 | ナノ

手当失礼


適当に放置しても治る、と思ったのだが、小隊長がすかさず救急箱を手に戻ってきた。
小太郎の手を取り、一度、深呼吸をする。
伝説を感じているのかもしれないし、単に傷が痛々しいだけかもしれない。

「…風魔様」

何と呼んだらいいか迷ったような、そんな声だった。

「あなたは金で雇われています。いつ裏切るかも分からない」

手慣れた手つきで包帯が巻かれていくのを、無感動に眺めてみる。

「近々大きな戦が起きるでしょう。敵方についた方が、あなたにとっては良いのかもしれません」

完成は早かった。
しかし、手はまだ自由になっていない。

「どうかお願いです、風魔様」

小隊長はじっと見上げる。
二日前の訓練場の、ご老体と同じ瞳で。

「裏切るのは構いません。ですが、それは、我らが主人が亡くなってからになさってください」