戦国 | ナノ

訓練失速


結局小さな争いだったらしく、小太郎の出るほどではなかった、と門兵は言った。

「さて次は、将棋にしようか…む、小太郎?」

それなら、いつ争いが始まるか分からないではないか。
今まで滅多に顔を出さなかった訓練場の屋根裏から、ひっそりと瞳を覗かせる。
小太郎が傭兵としてご老体の役に立つのは、一体いつになるのだろう。

「これ、小太郎!」

弱くも強くもない訓練を眺めていると、あのご老体の声がした。

「何故隠れておるのじゃ!将棋の約束はどうした!」

覗かせた瞳に、しっかり黒目が突き通る。
訓練場に乗り込まれた小隊長は軽く微笑み、風魔に伝えておきますから、と背中を押している。

しょうがない主君様だ、と隊員に向かって笑う。
それは悪い意味ではなく、困ったおじいちゃんへの愛情に満ちている。