戦国 | ナノ

同一本質


本質は全く同じものだ、と奴は冷たい目で笑う。
その目が気に入らない。

「君も僕も、主君のために働く駒だ」

確かに、そうだ。
かすがは謙信のためなら何だってできる。望まれるなら、軍を整備し、誰よりも速く戦場に乗り込み、謙信が足を踏み入れる前に争いを終わらせることだって。
奴も同じようにする。完璧な策、完璧な布陣、申し分ない駒。
だが、かすがは聞いたことがある。

「…前田はっ!」

あいつは、寂しそうに酒を啜っていた。

「前田は、お前のことを…」
「二度と、その名を口にしないでくれるかな」

あいつは、半兵衛は秀吉の、俺の友達だ、と。
かすがは謙信の駒。一歩前で盾となる。
ならば奴は、どこに立ち、何となるのか。

歪んだ表情の奥の、透明な目が揺らいだ。