戦国 | ナノ

全地前走


「秀吉殿か」

大きな影が、俯いた利家を覆い隠す。
太陽のない冷たい世界に来てしまったものだ、と冷えた自分の体を抱きしめ、一度だけ影を見上げる。

「どうしてこうなってしまったのだろうな」

影は言った。

「運命だ」

運命ならば仕方ない。
血が通わない指先が寒い、濡れてしっかり持つことのできない槍が、どこか遠くの地平線にあるのを見る。

影は利家の頭を掴んだ。
それはそれは穏やかな温もりだった。