戦国 | ナノ

眼界限界


目もくれてもらえない悲しみをどうやって表現したらいいのか、光秀は知らない。
彼女はこちらなど見ない。
呼んでも振り向いてくれない。
その後ろ姿がまた美しく、つい許しそうにもなってしまうが、最近良い結論に至った。

目がなければいい。
目がなければ、その瞳は自分も自分以外も映すことがなくなる。

「ねえ、帰蝶、私、謀反しようと思います」

彼女はいつもの通り、振り向かない。
蝋のような首をしならせたまま、何かをしている。

「馬鹿なことを言わないで」
「本気ですよ。手始めに帰蝶の命から頂戴します」

やっとこっちを向いた目は。
今からくり貫くその目は。
最後の瞬間、光秀を映す。

「好きでしたよ」

何と美しいことか。