愛慕愛蔵 「…夢っすか」 「夢ではない、馬鹿者」 気づけば館の布団の中で、天井を見上げていた。 真っ赤の衣装が目に痛い。 絞りすぎた手拭いは意味がない。 お主らしくもない、とぼやきながら、幸村は襖を開けた。 髪が揺れる、奥の景色は透けず、金ではなく茶の塊がゆらゆらと。 必死に看病をしてくれた幸村は、かすがではない。 忍となったかすがは甘いままだし、佐助はあの日から一歩も動けないでいる。 旦那、と呼んだ。 一つの区切りがついたら、と願って。 「どうした、佐助。やぶからぼうに」 「…何でもないっすよ」 どこからか、秋の風に混じって狐の声を聞いた。 |