戦国 | ナノ

栄枯朝顔


二人で眺めた朝顔の、つぼみがそのまましぼんでいる。
朝が苦手な市のために、長政が用意した朝顔。
これで早起きをしたくなるだろう、長政は微笑み泥だらけの手で市に触れた。

血だらけの手で、市に触れた。

「そうね、長政様のいない世界に朝なんて来るはずないわ」

瞳は黒く濁り、黒い手が市の顔を覆う。
涙が吸い込まれ、吸い込まれ、朝露の一粒は昼には蒸発してしまう定めなのだから、市はもう涙を知らない。