愛着愛別 かすががどこに仕えることになったかは分からない。 黙っていても追々分かるので、ひとまずそれは問題ではない。 佐助は逃げ出していた。 「とんでもない主君だな」 十二で知る現実は、先輩である大人が語るのよりは美しい。 生々しさを押さえた偽物の現実が、いっそ合戦の激しい体験話を飲み込んでしまいそうになる。 「死んだら意味ないし」 佐助は武士ではないから、日常茶飯事の裏切りは罪とは数えない。 忍は裏切り、本物の主のところへ帰ってくる。 烏がこれと決めた木へ毎晩戻ってくるような、そんな木を探している。 十二の小童の発言など気にも留めない戦国武将は、刺し違えてでも敵を殺せと言った。 死ねばすべてが終わるのは間違いで、少なくとも誰かあの優しい人は何か感じてくれる、はずだ。 「まだ死ねないっつの!」 「その通りだ」 木の上の憂さ晴らしの独り言に、幼い反応があった。 |