戦国 | ナノ

愛想愛憎


「あのさ、かすが」

中央広間に集まってしまえば、もう話すことはできない。
まだ間に合うよ、と言いたくて近づいたのではないことに、自分が一番驚いていた。

「俺、もしかすがを見かけても、もう一生声をかけないよ」

かすがは少なからず好意を抱いてくれている。
どうする。
どうしたらいいか、分からなかった。

俯いた角度が、とても美しい。
忍に年はない。

「だから、かすがから声をかけて」

まだ忍ではない佐助は五月大人だから。
かすがより五月早く生まれたから。
意地悪を手前に残し、広間へ向かう。

「そうしたら俺からも声をかける。一緒に戦う…のはできないだろうけど、なるべく手助けをするよ」

最後に振り向いた。
かすがはきっと、泣いていた。