戦国 | ナノ

愛言愛護


忍の里で生まれた者は十二になると、死ぬまで忍か、里に残り忍を養い育てる者になるか、のどちらかを選ばなければならない。
一律に十二まで育てられた子供らの、人生を決める決断。

「かすがは、里に残った方がいい」
「うるさい」
「だって、失敗ばっかりだし」
「うるさい」
「忍になるには優しすぎるし」
「うるさい」
「心配なんだよ」
「うるさいっ!」

佐助はいい忍になる、とよく褒められた。
かすがは駄目だ、と何度も注意された。

「情けをかけるなんて、忍失格だ」

忍が引く手あまたな時代、同じ主君に仕える確率は低い。

かすがは弱い。
佐助はいつか、かすがを殺さなくてはいけなくなる。

「まだ、忍じゃないし。かすが、頼むから…」
「村に残って、貴様の安否を考える日々はたくさんだ!」

髪の毛がさらさら揺れている。
そうしてかすがとは、決断の日まで会うことはなかった。