戦国 | ナノ

家庭訪問


それでいいのか、と問いかけた。
市は何故かと首を傾げた。

「誕生日なのだぞ、何故何をしなくてもいい、何も欲しくない、と言うのだ」
「どうして、って…」

市は傾げた首を、とうとう俯けてしまった。
そういうつもりではない、そういうつもりではないのに。

「市は長政様といられれば何でも幸せなのに」

いつものように過ごしたい、と市は言った。
長政は畳を換えて障子紙を張り替えるのを止めようと思った。