過去必衰 明日の幸せの話をした。 「慶次くんは仮定が好きだね」 しょうがなそうに微笑む半兵衛の肩を叩き、慶次は大きな口を開けて笑う。 「だってさ、考えるだけで楽しいだろ」 明日の幸せを、願うように仮定する。 明日はあの山を登り、新しい太陽を見よう。 日が明けるまで馬鹿騒ぎをして、あの店で団子を食べて、たまに町の若いのと喧嘩をしたりして。 秀吉と、半兵衛と、ねねと。 狭い狭い世界で。 「そういうの、嫌いじゃないけどね」 しょうがなそうな、けれども嬉しそうな、そんな半兵衛の笑顔が忘れられない。 なあ、と慶次は涙を隠す声を出した。 「俺が天下を取る、って言ったら、お前は俺についてきてくれたのか?」 「仮定には興味ないよ」 ばっさりと切り捨てた過去に、もはや慶次の入り込む余地はない。 明日は、秀吉と半兵衛とねねと。 「一人で夢に浸っていたまえ」 笑顔の昔話を、きっと、夢の中で。 |