戦国 | ナノ

鈍足弊害


ご老体を守るのが使命である小太郎の時計は、以前よりずっとゆっくり回るようになった。
朝も昼も夜も、絶え間なく降り注ぐ桜を眺める。
光を浴びる。
落葉に馳せる。
雪を愛でる。

「季節を感じるのじゃ、小太郎」

一年中同じ姿で、刃を向け、血を流す。

「風流じゃろう」

そして春に始まる合戦に備える。
この老人を失っても、小太郎の時計の速さは元には戻らない。