戦国 | ナノ

薄闇濃悲


「もしもさ、もしもだよ」

寝床には薄い闇と慶次の声があった。

「秀吉と半兵衛が前田軍に入りたいって言ってきたらさ、俺も前田軍に入ったよ」

慶次は昔手合わせをした時より、格段に強くなっていた。
悲しい強さだった。

「皆で笑ってさ、昔みたいに、それよりもっと楽しく、……」

慶次は利家の布団の裾を掴んだ。
悲しい強さは、旧友を止めるための強さだった。

「俺、変だよ。逆でも、嬉しくないわけじゃなかった、気がする……」

悲しい強さは、悲しさと引き替えだった。