戦国 | ナノ

多方贖罪


「豊臣方が、慶次、あなたの話を聞かなかったら、どうなさるのです」
「まあ、その時はその時に考えるよ」

慶次はそう言って、加賀を出て行った。
飯に手を着けず、小さな友人だけを連れて。

その時はその時に考える、と笑ったが、まつは分かっていた。
慶次は既にすべての可能性を考え、それに返す自分の回答、結末まで作り上げている。
揺らぎない秀吉も、根は優しい秀吉も、慶次の話を耳に入れない秀吉も、すべて。

「何もかも、受け入れたのですね」

まつは幾分か多く飯を炊いた。
慶次の一つの答えに、秀吉を連れ帰ってまつの飯を食べさせる、というのがある気がした。