ハンサムフレンド 「あら、格好良くしてもらったのね」 「濃姫くん、いらっしゃいませ」 するりと落ちた長い黒髪が、歩くごとに揺られては戻る。 どうせセットするから下ろしてきたの、と言うけれど、その髪の毛なら充分完成形だ。 「濃姫くん、今日はどのような髪型に?」 「そうね、あなたにお任せするわ」 「では、これは?」 黒髪ストレートのためのヘアカタログから、付箋のついた1ページを引っ張り出し、楽しそうに髪型を指でなぞる。 「いいわね」 「これは、長さを全く変えないでできるから…」 今日一日、半兵衛は仕事をする気がないようだった。 |