職業 | ナノ

カタログセンス


「ちょっと、言うのが遅いんだよ、君は」

半兵衛は髪のカタログを捲りながら、遅れて昇ってきた佐助に文句を言う。

「濃姫くんが来るのが分かっていたなら、もっと早くに色々見ておいたのに」
「髪型選びすか」
「濃姫くん、どんな髪型が似合うかな。ねえ、蘭丸くん、濃姫くんはどんな服を着てくるか知っているかい」
「いつもの和服じゃねーの、あの、赤と黒の」
「だったらやってみたい髪型があったんだ。どこにやったかな」

三つ四つカタログを引っ張り出し、半兵衛は一人妄想の世界に閉じこもってしまった。
それ、やるの俺様なんですけど、は通用しない、分かっている。
あの綺麗な黒髪をどう変身させるか、あの和服にどう合わせるか、半兵衛の夢は尽きない。

「…えーと、蘭丸はどうする?スプレーとワックスで固めようか」
「うん、それでいい」

半ば呆れたように、鏡の中の蘭丸が頷いた。