職業 | ナノ

ウェイトタイム


「蘭丸じゃん」

うろうろうろうろ、振り返った顔はいやに眉が寄っている。
眉が繋がったら半兵衛に眉カットを頼めばいい、じゃなくて。

「学校はどうしたのさ」
「お前こそ仕事しろよ、さっきからずっと待ってたんだぞ」
「いやいや、学校は?」
「信長様がお休みを取って下さった」
「ああ、そっか」

だから眼鏡屋は午後から臨時休業で、濃姫が美容室へ来るのか。

「蘭丸も濃姫様と時間をずらして髪を整えてもらいなさいって、予約すんの忘れてたから早めに来たんだぞ」
「了解了解、留守にして悪かった。上行こっか」

小さな強盗はやっと眉の力を抜き、さっさと二階へ昇っていく。
立派な靴で昇る階段に、立派な音が響いている。