職業 | ナノ

ア・ランチボックス


元就のことで頭がいっぱいで机の上に弁当を置き忘れてしまったことに気づいたのは、下の古本屋を開店して一眠りして客が三人来て一人が絵本を買っていってしばらくして小腹が空いて時計を見たら11時で、まあそれくらいの時だった。
昨日の唐揚げの残りだからそれほど惜しくもないものを取りに戻る労力が惜しい。
ついでに濃姫が午後2時に来ることを伝えるのを忘れていた。
散々だ、元就のせいだ。

「じゃあラーメンを食べに行こう」
「何、ラーメンの気分なの?」

二階の美容師は弁当の件を切り出すと、特別嫌な顔もせず、手を叩いてすぐに言った。
いつもは何でもいいとかいらないとか、そう言うのだが。

「元就くんのことを考えていたらあまり食べれなくてね、がっつり行きたい気分」
「なら島津さんとこ行こうか」
「こってり、最高じゃないか」

元就のせいで、と言うと、元就くんが落としたお金で、と彼は笑った。