職業 | ナノ

ブロンドブロード


「これが朝シャンというものぞ」

しっかり金を払い、元就は爽やかな顔でブローされた髪を見る。
大満足、いや、大々々々々々々々々々々々満足らしい。
はいはい、良かったね。

「元就くん、これからどこかへ行くのかい」
「特に用事はないが…どうかしたか」
「わざわざセットしに来たから、デートか何かかと思って」

ガタン、と元就は立ち上がる。
お疲れ様の一杯がグラグラとソーサーの上で踊る。
みるみる真っ赤になっていくその顔に、半兵衛は紅茶をもう一杯勧めたが、元就の足はもう外へ外へと向かっていた。

「あ、元就くん、上着…もういないか」
「いいよ、明日にでも届けに行こう」
「花屋にね」

まだ揺れるカップを片付け、半兵衛は大きな欠伸をする。
窓から下を眺めると、さらさらと流れる綺麗な茶髪が見えた。