職業 | ナノ

ハートフルハード


「元就くん、早いね」
「早すぎっつーか、何なの、あれ」

半兵衛は一度振り返り、鏡に映った自分の髪を確認する。
佐助によって雲に戻った髪は、ふんわり半兵衛の頷きについてきた。

「まあまあ、客商売、客商売。来てくれるならいつだって開けるさ」

鍵を開けに降りていく半兵衛を見て、窓から元就の頭を見る。
開店は9時だ、と一度はっきり言うべきだろうか。
最初の頃は9時ちょうどに来ていた気がするし、適当なメモに来るだの来ないだの書かないで、きちんと電話をくれていた気もする。
それが今じゃこれだ。

「心を許しているってやつかね」

雑談をしながら階段を昇ってくる二人を笑顔で出迎え、佐助は商売道具をしまったポーチを腰につけた。