職業 | ナノ

ターンリターン


金庫を預け、幸村の髪を片付け、先にあがらせてもらうことにする。

「明日元就来るって」
「時間は?」
「書いてなかった」
「まあ、どうせ朝一番だろうけど」

前髪しか切らなかった奴のために、半兵衛はわざわざ下まで降りてきてくれた。
美容師もサービス業だな、とこういう時に実感する。

「寝坊しないでよ」
「某が起こしてやるぞ、佐助」
「今、幻聴が聞こえたんですけど、ねえ、旦那」
「知らぬ」

そっぽを向いた顔に、短くなった前髪がついて行く。
まあいいけど、と幸村の腕を掴んで、いつもと反対方向に歩き出した。

「おい、家はあっちだぞ」
「寄るところあるから、黙って着いてきなさい」