職業 | ナノ

マッチランチ


「そうだそうだ、旦那が夜に寄るかもしれないから、少し気にしといてほしいんだった」
「カットかい?」
「そう、前髪ね」
「了解」

頷きながら、半兵衛は予約表の5時以降に×印をつける。
毎日スカスカなのに予約表をつける必要はあるのか、と思うが、こういうのは普段からやっていないといざ忙しくなった時に対応できない、と熱弁されたのでもう言わないことにしている。
予約よりも飛び入りが多いことはいつか進言しようと思っているのだが。

「彼は前髪が伸びるのが早い」
「エッチなんだよ」
「迷信だね」
「じゃあ、勉強ばっかりしているからだ」
「頭にばかり栄養が行っている、っていうことかな」
「そんな感じ」

ちょうど12時のチャイムが鳴り出したので、佐助は大きな伸びをして、お昼を食べませんか、とあくび混じりに言った。

「脳に酸素が行っていないのかい」
「まあ、うん、体全体に栄養が足りないって感じ」