ロングコント 「いらっしゃいませ…何だ、君か」 「何だ、とは何だよ。お客様は神様だぜ」 「へえ、ついに髪を切られに来たのかい?いい心がけだ。さあ座りたまえ、そのだらしない髪を切断してみせよう」 「大変申し訳ございません半兵衛様」 息のあったコントのように、二人は会う度この会話を繰り返す。 男にしては長すぎる髪を、半兵衛は切りたくて仕方ないのだと言う。 しかし、慶次が髪を伸ばす理由を半兵衛が知らないはずはない。 「何の用?」 「お手紙ですよ、外国から」 慶次は友人の幸せと成功を祈って、髪を伸ばしている。 若くして恋人を失った友人が幸せになれるよう、幸せになったらその髪を友人に切らせる、といつだったか慶次は笑って言った。 「本当かい」 「嘘ついてどうするんだよ」 「君、仕事は」 「スピーディーにこなしてるから、まだ大丈夫。それ、開けてくれよ、元気してるか気になるし」 途端に、この空間は活気づく。 そりゃあ、この友人のための美容室なのだから、当たり前といっては当たり前の話だ。 佐助は適当な壁にもたれ掛かり、今まさに古本を買いたくて店員を探している人はいないか、と思った。 |