職業 | ナノ

スローラグ


美容室のゴミが払われるように、いつの間にか炒飯が完成していた。
慣れた手つきで皿に盛り、二階で参考書相手に唸る幸村を呼び、ソファで寝転がっている信玄の前にテーブルを寄せて料理を並べる。

「幸村はまだか」
「旦那も受験生ですから、飯の匂いがしただけじゃ降りてこなくなりましたね」
「幸村!早く来ぬとなくなるぞ!」

あわあわと階段を転げる音が聞こえ、少し遅い夕食が始まる。
炒飯は少し焦げていたが、まあ、許してほしい。

「ねえ、旦那、勉強してますか」
「止めろ、飯くらい旨く食わせろ」
「そうやって逃げ腰猫背で勉強してると、目悪くなりますよ」
「う、うむ…そうだ、前髪が目にかかって邪魔だから、佐助、切ってくれぬか」
「分かった、明日の帰りにでも寄って。竹中ちゃんに頼んどく」
「そうじゃなくてだな…」
「ごちそうさまでした!旦那は勉強!お館様は静養!俺様は皿洗い!」

逃げ腰はどっちだ、と自分でも思う。
シンクに皿を置くと、皿が割れたような音がしたが、何も割れていなかった。