ネームツー とりあえず二階へ上がり、作業する人たちを避けて段ボールから新品の櫛を取り出し、蜘蛛の巣に引っかける。 「一体どうしたらこうなんの」 「それが僕にも分からない」 大きな鏡がはめ込まれた前に、ゆったりとした椅子が用意されている。 三ヶ月前はこういう床を掃除したり、ハサミを持ったり、まあ色々したものだ。 「…俺様、カットはあんまり好きじゃないんですけど」 「いいよ。シャンプーとセットが出来れば僕は事足りる」 「本当に竹中さんだけが客でいいわけ?」 「もっと呼びやすい名前で呼んでくれないか。それに、構わないって何回も言っているだろう?全くしつこいな、ハサミを突きつけるよ」 「すんません」 ふわふわに戻った髪を新品の鏡で見て、常連は、半兵衛は満足そうに頭を撫でる。 それだけでいいはずがあるまい、と思ったが、蜘蛛の巣を雲に戻す喜びが三ヶ月前の自分をうずうずさせて、この二階の完成を早く、と願ってしまった。 「じゃあ、竹中ちゃん、で」 |